ロング法とショート法の違いについて
さて、ロング法、ショート法、アンタゴニスト法の選び方で書いた、ロング法とショート法の違いについて、もう少し詳しく書いていきたいと思います。
ロング法とショート法は、卵巣機能によって使い分けられる
ロング法とショート法の使い分けは、主に卵巣機能によるものです。
次の二つの場合はショート法が使われます。
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低い=卵巣に残っている卵子の数が少ない
- FSH(卵巣刺激ホルモン)の値が高い=卵子が発育しにくい状態になっている
また、これらの値は、年齢とも関係しているため、
- 37歳以下ならロング法
- 38歳以上ならショート法
という区分けが、一般的には用いられているようです。
ロング法とショート法の特徴
ロング法の特徴|質の良い卵子が採れるが、体への負担が大きい
ロング法は、最も一般的な卵巣刺激方法で、何も問題がなければ、最初はロング法から始める人が多いようです。
長所
ロング法は
- 質の良い卵子が採れる
- 最も採卵スケジュールがしやすい
というのが最大のメリットです。
短所
ショート法の特徴|体への負担が少ないが、排卵コントロールが難しい
長所
ロング法は体への負担が大きいですが、それを解消するのがショート法です。
ショート法は、
- 注射回数が少ない
- 薬の投与期間が短い
- 通院回数が少ない
といった特色があります。
そのため、
- 卵巣の刺激を軽減できる
- OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりにくい
といった長所があります。
また、ロング法よりも採卵数が多いのも特徴のひとつですね。
短所
一方で、ショート法には、
- 採卵のタイミングがとりづらい
- 自然排卵のリスクがある
- 卵子の質の低下を招きやすい
という欠点もあるので、どちらも一長一短あるということになります。
ロング法とショート法のスケジュール
ロング法のスケジュール
ロング法は、体外受精を行う前の生理周期から始まります。
ピルの服用
ピルの服用は行わない場合もあるのですが、前周期の高温期から服用する場合もあります。
これは、前の周期に育ったまま残っている卵胞を取り除いたり、排卵スケジュールをコントロールするためのものです。
ピルの服用をやめると、2~3日後に生理になります。詳しくは「体外受精でピルを使う理由は?」を参照して下さい。
排卵抑制剤
前周期の高温期から、排卵抑制剤を使い始めます。
この時使用するのは、GnRHアゴニスト製剤の点鼻薬ですね。1日2~3回の噴霧を、排卵促進剤の投与まで続けます。
排卵誘発剤
月経開始3日目から、排卵誘発剤のhMG製剤の注射を始めます。
この時は飲み薬ではなくて注射ですね。7~9回、ほぼ毎日打つことが多いです。排卵誘発剤を売っている期間に、超音波検査で卵胞の大きさを確認していきます。
なお、この時の注射は、自宅で注射出来る場合もあるので、医師に聞いてみて下さい。
排卵促進剤
複数の卵胞が18mm程度になったら、排卵促進剤のhCG製剤を注射します。注射後、36~40時間後に排卵が起こるので、34~36時間後に採卵することになります。
ちなみに、
- hCG製剤⇒排卵促進剤
- hMG製剤⇒排卵誘発剤
です。間違いやすいので、注意して下さいね。
ショート法のスケジュール
ロング法が体外受精を行う前の生理周期から始まるのに対して、ショート法は体外受精を行う周期の中で行うので、薬の投与期間が短くなります。
使用する薬は、ロング法の時と全く同じです。
ピルの服用
ロング法と同様に、医師によっては指示をします。
排卵抑制剤
月経開始1~2日目から、排卵抑制剤のGnRHアゴニスト製剤を使います。
ロング法の時と全く同じ点鼻薬で、1日3回の噴霧を毎日、排卵促進剤の投与まで続けます。
排卵誘発剤
排卵抑制剤の点鼻薬を使い始めた翌日から、排卵誘発剤のhMG製剤を毎日注射します。注射は7回くらいが多いようですが、毎日打ちます。
ロング法と同様に、この期間に、超音波検査で卵胞の大きさを確認していきます。自己注射が可能です。
排卵促進剤
ここは、ロング法と全く同じで、複数の卵胞が18mm程度になったらhCG製剤を注射、34~36時間後に採卵します。