凍結杯移植
胚凍結を行うのは、どんな場合?
- 状態の良い受精卵が複数個出来た
- 最初から採卵周期には、胚移植しないことを決めている
状態の良い受精卵が複数個出来たので凍結する場合
採卵して体外受精をした場合、状態の良い受精卵が複数個出来る場合があります。
でも、状態の良い受精卵を全て胚移植してしまったら、多胎妊娠してしまうリスクがありますよね。そのため、一番良いものだけを胚移植し、残りは凍結保存して、今回ダメだった場合や、二人目、三人目が欲しい時に胚移植できるよう、凍結保存しておくことが出来ます。
※日本産婦人科学会では、多胎妊娠を防ぐために、原則として胚移植する受精卵は1個と定めています。
最初から採卵周期とは違う周期で、胚移植する方針の場合
体外受精や顕微受精を行った場合、ほとんどのケースで、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激する方法を取っています。ホルモン分泌を無理にコントロールしているわけですから、女性の体のホルモンバランスは良いとは言えない状態になっています。
ということは、採卵して受精した周期に女性の体に胚移植しても、受精卵が順調に着床して妊娠を継続できる可能性は低くなります。
そのため、最初から採卵・受精した周期には胚移植せず、受精卵をいったん凍結保存して、女性の体の状態を整えてから胚移植するという方法もあります。
凍結胚移植のメリットとデメリット
凍結胚移植のメリットとしては、
- 最適な時期に胚移植できるので、妊娠率が上がる
- 毎回採卵をしなくてすむので、苦痛・負担の軽減ができる
- 体外受精で一人目⇒二人目の時の使用も可能
- 若いうちに老化していない卵子で受精させておけば、後々の心配が軽減される
などがあります。
なかでも、妊娠率が上がるのは魅力的で、安定したホルモン環境を人為的に整えてから胚移植が出来れば、妊娠率は確実に上がります。ホルモン環境をどのように整えるのか?については後で書きます。
日本産婦人科学会の資料によると、胚移植あたりの妊娠率は、体外受精が26.4%、顕微受精が28.3%なのに対し、凍結胚移植は32.1%とかなり高くなっています。
また、採卵回数を減らせるメリットも大きいですね。採卵するためには、排卵誘発剤や排卵促進剤で卵巣を刺激しないとならない場合が多く、これによってOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を発症するケースがあります。
OHSSは、悪化すると非常に危険な症状なので、卵巣への刺激は少ないに越したことはありません。
凍結融解胚移植の方法
さて、一旦凍結した胚を移植するためには、凍結胚を溶かして、それから移植をする必要があります。このことを「凍結融解胚移植」と言います。
この凍結融解胚移植をするためには、女性のホルモンバランスを考えて最適な時期を選ぶ必要がありますよね。この「最適な時期」を選ぶための方法は全部で3つあります。
- 薬を使わず、自然にやってくる排卵のタイミングで胚移植する
- 排卵誘発剤を使って、人為的に排卵周期を作り出す
- ホルモンを補充して、子宮環境を整えてから移植する
クリニックによって、また患者の状態によって、どの方法を使うかは変わるようですね。
ただ一般論としては、1の方法だと、正確な排卵日の決定が難しく、2の方法だとOHSSのリスクや、クロミフェン製剤によって子宮内膜が薄くなるリスクもあるようです。書籍など読むと、3のホルモン補充による方法が、最も確実性があるようですし、身体的リスクも少ないようですね。
凍結胚はいつまで使えるのか?
凍結胚は、基本的には半永久的に使用できます。そのため、一旦凍結しておけば、あとは自分の都合を医師に伝えて、スケジュール調整が出来ます。
ただし、凍結保存をした受精卵は、永久に保存されるわけではありません。毎年(病院によっては2年ごと)、保存を更新するかどうかの確認が病院から入るので、その時点で希望しなければ廃棄されます。また、女性が閉経した場合や、婚姻関係が解消された場合は、その時点で廃棄されることにもなっています。