がんになっても妊娠を諦めない取り組み
先日、日本経済新聞に、がんと不妊に関する記事が載っていました。
不妊治療の進歩によって、がんになっても、妊娠を諦めずに済むようになってきているという内容です。
がんと不妊の関係
がん治療が妊娠・出産を困難にするケースがある
若いうちにがんになってしまうと、がん治療によって、妊娠・出産が難しくなるケースがあります。
抗がん剤や放射線の影響で、卵巣や卵子がダメージを受けてしまうからです。
以前は、がん治療のためには、不妊を受け入れるしかないと考えるのが一般的だったようですが、最近は、医療技術の進歩によって、将来妊娠する可能性を残すことが出来るようになっていますね。
卵子の凍結保存で、がん治療後の妊娠を可能にする方法
その一つが、以前から国内で実施されている、卵子の凍結保存。
がん治療に入る前に、卵子を凍結保存しておき、がん治療が終わった後に、体外受精によって妊娠する可能性を残すという方法です。
ところが、この方法だと、生理周期に合わせて排卵誘発剤を打たないとなりません。
生理周期に合わせての採卵になりますから、採卵するまでに時間がかかります。
だから、がんが見つかった後に、すぐに治療・手術に入らないとならないケースでは、採卵をしている時間が持てないこともあるのです。
卵巣組織の凍結保存のメリット
これに対して、最近は、卵巣組織そのものを凍結保存する医療技術が開発されたようですね。
外科手術によって卵巣を取り出して保存するため、卵子を取り出す方法に比べると、排卵を待つ期間が必要なくて、短期間で採卵できます。
そうなれば、がん治療や手術にすぐに入ることも可能です。
そして、がん治療を終えてから、凍結保存していた卵巣組織を体内に戻すことで、自然妊娠や体外受精ができるようになるというわけです。
妊娠機能の温存についての課題
不妊治療の技術で、がんになっても妊娠できるという選択肢が出来たことは、本当に素晴らしいことだと思います。
ただし、卵子の凍結保存については、費用がかかる上に妊娠確率がそれほど高くないという問題があります。
詳しくは、未受精卵の凍結保存について
また、卵巣組織の温存については、欧米では実施されているものの、日本では試験的な位置づけに過ぎません。
がんの状況によっては、適用できないケースもあるそうです。
費用やリスクをしっかりと患者に伝えたうえで判断してもらう体制作りなども課題の一つですね。