浦安市が未受精卵の凍結保存に助成金を予定

浦安市は、2015年2月6日、未受精卵の凍結保存に対して助成金を出す方針であるという発表をしました。

順天堂大浦安病院と共同のプロジェクトのようで、対象年齢は20~35歳くらい。浦安市が助成金を出すことで、従来の3割程度の負担で未受精卵の凍結が出来るようにするようです。

未受精卵の凍結は、100万円に上ることもあると言われています。それが3割程度・・・つまり30万程度で受けられるようになれば画期的なことです。

さて、このニュース、聞いては見たもののどこか「雲をつかむような話だな・・・」と思いませんか?日本では、不妊治療の情報がまだまだ不足しています。この状態で、いきなり「未受精卵の凍結」と言われても、よくわかりませんよね。

そこで、このトピックについて、少し書いていきたいと思います。

なぜ未受精卵の凍結をするのか?

子供が生まれるためには、精子と卵子が受精をしないとなりません。

昨今問題になっているのが「卵子の老化」という問題。女性の年齢とともに、卵子も老化し、年齢ととともに妊娠率がどんどん落ちてしまうということが問題になっているのです。

仕事を持っている女性の場合、仕事が忙しいことで婚期が遅くなったり、結婚はしていても子供を作ることを先延ばしにしたりといったことは、現代の日本では普通にあります。

そのため、いざ「子供を作ろう」と思った時に、「実は卵子は老化するので、妊娠率はどんどん落ちていきます・・・」と突然聞かされて困ってしまうケースが、とても多くなっているのです。

そこで、「卵子の老化を防ぐために、若いうちに受精卵を人工的に採卵して、それを凍結保存してしまう」という方法が考えだされました。

これが、卵子の凍結保存です。





現在でも未受精卵の凍結保存は行われている

実は、現在でも未受精卵の凍結保存は、国内で実施されています。

2013年9月に、日本生殖医学会がより幅広い女性に未受精卵子の凍結保存が出来るようにするガイドラインを示すことで、未受精卵の凍結保存は、幅広く実施されることが可能になりました。

卵子の凍結保存にまつわる問題

でも、この卵子の凍結保存については、様々な意見があります。

特に、生命の神秘にかかわるところに、そこまで人の手を入れてしまって良いのか?という倫理的な問題は大きいです。

不妊で悩んでいる人だけでなく、全女性が対象になり、しかも浦安市が助成することで利用者が増えることになります。不妊治療を受けた人の受精卵を凍結保存するのとは意味合いも、対象者の幅も、全く異なってきます。

また、受精卵の凍結とは違い、卵子の凍結保存は、悪用されたらどうなるのだろうか?という不安感もあります。もちろん、浦安市も順天堂大浦安病院もセキュリティーには万全を期すとは思いますが、悪意を持った誰かが売買をするようなことがあったら、恐ろしいことです。

浦安市が助成金を利用者が増えれば、管理すべき未受精卵の数も増えます。管理体制は本当に大丈夫なのだろうか?という不安はすぐには払しょくできません。

受精率が高くないという理解が周知されるか?

「卵子を凍結保存すれば、卵子は老化しない・・・」

これは、それだけ考えれば夢のような話です。でも、凍結していた卵子は、必ずしも受精するとは限りません。いくら女性の年齢が若くとも、たまたま質の悪い卵子を凍結保存してしまっていれば受精は難しいでしょう。

実際、国内で行われている未受精卵は、体外受精を行う時の受精卵の妊娠率と比べると、1/10~1/20の確率まで落ちてしまうそうです。

一方で、浦安市から助成金が出ても、未受精卵の凍結保存には数十万のコストはかかります。「コストはかかるけど、受精できる可能性がそんなに高くない」ことも、市や病院がどのように伝えていくのか?という点も避けて通れない問題です。

いずれにせよ、未受精卵の凍結保存という「凄い」というイメージの前に、情報がしっかりと伝わらなくなることが、最も怖いことです。

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