不妊が原因で離婚を考えているご夫婦へ
【著者 今井さいこ】
LIB Laboratory 代表
NPOハピマムプロジェクト 理事
高校生の時「環境による心への影響」に興味を持ったことから、大学で心理学を専攻。臨床心理学を中心に認知心理学、知覚心理学、行動心理学、生物心理学、発達心理学を学ぶ。その後、社会人としてベンチャー企業に勤める傍ら、心理カウンセラーとしての勉強と実践を積み、2009年より女性向けの個人向け心理カウンセリングを開始。自身の妊活経験で「妊活中も、妊活以外の女性としての楽しみを充実させたい」と感じたことから、2013年より妊活女性・ご夫婦向け心理カウンセリングを開始。現在、妊活中のメンタルケアだけでなく、産後女性のメンタルケアも行なっている。
「ワルモノ探しの妊活」から抜け出しましょう
「なかなか子どもができない」
その焦りから夫婦でのすれ違いが起きてしまうことは珍しくありません。
夫婦カウンセリングに訪れるご夫婦の中には、「このカウンセリングで妻/夫が変わらないなら離婚も辞さない」という覚悟を持っていらっしゃる方もいらっしゃるほどです。
愛し合って結婚したはずなのに、なぜこのようなすれ違いが起きてしまうのでしょうか。
夫婦カウンセリングでの経験から、「妊活」に対する夫婦それぞれの捉え方の違いがあると私は思っています。
女性は「子を産む」という肉体的なタイムリミットがあり、時間軸で妊活を捉える方が多いです。
一方、男性は「養う」という観点から仕事(昇進や転勤など)や収入など生活の基盤を軸に妊活を捉える傾向があります。
つまり、女性は「時間(年齢)」という止められない敵と戦っているのに対し、男性は「一家の大黒柱としての責任」という心の内に秘めたもの(自分自身)と戦っているのです。
まず、ここに溝があることに気づきましょう。
「夫が妊活に協力をしてくれない」
「妊活を始めてから妻が必死すぎてこわい」
など双方からの意見を聞きますが、上記のことを踏まえた上でそれぞれの思い、背景を整理すると「子どもがほしい」という気持ちは一致していることがほとんどです。
「夫が協力しないから妊活が進まない」
「妻がイライラしているから妊活と言われても家に帰りたくない」
そんな『ワルモノ探しの妊活』から抜け出すことがまずは大事です。
そのためには、「子どもを授かる」ということについてのお互いの考えをきちんと話し合うことが大切になります。
夫婦2人では感情的になってしまい、なかなか話し合いにならない場合には、第三者(医師、カウンセラーなど)に間に入ってもらいましょう。
それぞれのライフプラン、共有していますか?
“子どもがほしい気持ち”が一致していることはわかった。
じゃぁ、そのあとはどうするの?
そう思いますよね。
その後は、夫婦それぞれのライフプランを話し合いましょう。
妊活や子供のことだけではありません。
仕事のこと、趣味のこと、親の(介護の)こと、ペットのこと、家のこと・・・
自分がどんな未来を描いているか、理想を持っているか、話してみましょう。
そして、それを1枚の紙に表してみると良いと思います。
いつ頃どんな生活をしているか、その理想の話はきっと楽しいはずです。
そして、そのためにどのぐらいお金がかかるのか、という現実も見えてくると真面目に将来を考えるきっかけになります。
未来から逆算すると、いつ頃子どもが生まれることが2人のライフプランにとっては理想的なのかもわかります。
結婚をする時に、「この人となら楽しい未来が待っているかも」そう感じた思いを2人のライフプランづくりを通じて確信できるのです。
「子は鎹」ではない夫婦関係を築くために
ここまで一緒にやってみると、「妊活の土台は夫婦の絆」であることを実感していただけるのではないでしょうか。
妊活は、当たり前ですが1人ではできません。
また、どちらかが我慢をすれば良いものでもないですし、どちらかが頑張れば良いものでもありません。
夫婦2人の気持ちが一致していることをお互いが感じた中で進めていくのが理想です。
中には、お互いの我慢の末に妊娠・出産をした方たちもいるでしょう。
ですが、そういう方たちのその後の育児・夫婦関係のお話を聞くと胸が痛くなることもあります。
「子は鎹」という言葉がありますが、そうではなくて、長い人生の最後まで一緒に歩むパートナーとしての関係を築いていきたいものですよね。
そう考えると、妊活は夫婦の絆を深めるきっかけになります。
今、夫婦仲が悪く離婚まで考えている方も、もう一度パートナーと心から繋がれる関係を目指してできることから始めてみてはいかがでしょうか。
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