「質のよい卵子」にとらわれ過ぎていませんか?
【専門家紹介】
小日向 るり子
心理カウンセラー
フィールマインド 代表カウンセラー
「どんな話も否定しないで受け止める」を理念とする組織で電話相談員として活動し、その後もカウンセラーとして約2200件のご相談への対応経験を持つ。「どのような話でも受け止める」ことをモットーとしている。
HP http://feel-mind.net/index.html
巷にあふれる「質の良い卵子」関連情報・・・
「妊娠するためには質のよい卵子が必要です」
不妊治療サイトや不妊に悩む方たちの掲示板を読むと必ず出てくる文章ですよね。
女性の卵子は生まれてから作られるわけではなく、生まれた時点で全ての卵子の元細胞がすでに卵巣に約700万個あります。
そしてこれが年齢とともに減っていきます(思春期で約300万個になり、37歳では約2万5000個)。
ですので、残る卵子ができるだけ質のよい卵子であるように心がけて、妊娠しやすい卵子を保っていきましょう・・・というものが「妊娠には質のよい卵子が必要」という主旨となります。
そして、
「では、卵子の質を高めるにはどうしたらよいか」
ということで様々な方法が情報としてあふれています。
- 食事面では5大栄養素を過不足なくとることはもちろん、特にビタミンやミネラル、大豆や青魚をたくさん食べましょう。
- 抗酸化作用のある食品を積極的にとっていきましょう。
- サプリメントも活用して栄養素を補っていきましょう。
- 生活面では、早寝早起き、規則正しい生活リズムを心がけましょう。
- 適度に運動をする習慣をつけましょう。
- 体質改善に漢方も有効です。
等々。
しかし、ネットやSNSの普及で情報はあふれ、社会情勢もめまぐるしく変わっている現代です。
決して安くない不妊治療費を稼ぐために共働きをしている方も多いでしょう。
多くの人が「時間が足りない」と感じている日常の中で、早寝早起き質のよい睡眠、バランスのとれた食事に適度な運動、漢方飲んだりサプリ飲んだり・・・
カウンセラーの立場からみると、これらを完璧にやろうとすると、不妊治療にとても大切な「ストレスを溜めない」という生活からどんどん離れていってしまうことが心配です。
○○すべき、でもできない、という強迫性思考は大きなストレス要因で、これは精神衛生上避けなければいけないことなのです。
~しなければならない、と思っている自分に気づいたら注意です
私は○○をやって妊娠できましたよ!○○がおすすめです!!
といったネットの情報をみて、私もやってみよう!と前向きに思えるのであればよいのですが、「私も、やらなければ」と思っている自分がいたら気をつけてください。
この「やらねばならない」という思考は強迫的思考=ストレスです。
つまり、気持ち的にやりたくないかやる時間がないかやる余裕がないか、という状況であるのにそれを無理してやろうとしているということです。
情報を取捨選択する勇気を持ちましょう
妊娠するためにできることは何でもする、という気持ちももちろん大切です。
でも、卵子の質をあげるために数多くあがっている情報については、自分の環境や生活スタイルに合わせて取捨選択する勇気も持ちましょう。
日本人は気質的に真面目で几帳面な方が多く、協調性を大切にする国民性のため、他の人がやれているなら私もやらなければ、と思い込んでしまう方が多いのです。
基本は今の自分自身の心と身体に無理なくできることだけをするということです。
ご夫婦2人の赤ちゃんです。不妊治療の継続や方法について、迷ったらネットで相談ではなく、まずパートナーと相談しましょう。
「今は仕事が辞められないから多少の生活習慣のズレや食生活は目をつぶろう。その代わり、妻に収入がある分だけ経済的には余裕があるからサプリで補おう、漢方を試してみよう」という話になるかもしれませんし、「生活リズムや食生活を優先するために仕事を減らそう、辞めよう」など、それぞれの家庭によって方針や価値観は異なるものです。
このあたりの価値観を夫婦で統一しておくこともストレスの軽減になります。
女性は女性ホルモンの影響でPMS(月経前症候群)、マタニティブルー、産後鬱、などメンタルが不安定になる要素を元々持っています。
妊活にもまず精神の安定が大切。自分の心を穏やかに保つことを大切に考えていきましょうね。