“冷え” は妊娠に対してさほどマイナスの影響は与えない
東京では春の訪れを告げる梅が盛りを終えるとともに日中は随分と暖かくなってきました。
ですが、朝晩はまだ手袋やマフラーが必要なくらいの寒さが続いています。
そういった寒さも相まってか、妊活と冷えに関する質問を受ける事が多くなっています。
やはり、「冷えると妊娠しない」という “常識” を多くの方が知っているからだと思いますが、実は多くの方が知っている “冷え” は妊娠に対してさほどマイナスの影響は与えないことをご存知でしょうか?
今回は、そんな「冷えと妊娠の関係」について、お話したいと思います。
【専門家紹介】
山田 光敏 ヤマダ ミツトシ
鍼灸マッサージ師
東京身体療法研究所 総院長
生後1か月の赤ちゃんから104歳の高齢者までを受診する。
不妊施術を中心とし、ダウン症や脳性麻痺と言った障碍を持った赤ちゃんの発育援助、女性に対しては美容から症状緩和高齢の方の痛み対策など、幅広く治療する。
不妊施術治療院としては都内最古の歴史を持つ。
HP http://www.tokyobody.jp/cgi-bin/new/index.cgi
「冷え」は人間にとって必要な反応
冷え性、という言葉を聞くと「手足が冷える」「お腹やお尻周りが冷える」という症状が頭に浮かぶと思いますが、こういった症状は人が生きている上で “起こらなくてはいけない反応” であり、問題となる症状ではありません。
これを理解するために、血液の持つ「熱を運ぶ」という作用を知っていただきたいと思います。
私たちは、氷河期を経て生き残る術を身につけた種族です。
氷河期には、食料を調達のため移動しやすいように手足が長くなりましたが、それにより体表面積が増える事につながりました。
体表面積が増えれば、その分熱も失いやすくなり、凍傷になって手足を失いやすくなります。
そうした背景から、寒さを感じると手足の末梢の毛細血管を収縮させ、血液の流れを抑えて熱を逃がさないようにしました。
そして、表面温度を下げる事で凍傷になりにくくしたのです。
ですから、寒いときに手足が冷たくなるのは、生き物として当然の反応であり、本来気にする必要はありません。
手足の冷えは、子宮や卵巣の冷えを意味しない
また、私たちは体毛を失った代わりにより服を着る事を覚えるとともに、”断熱材” として脂肪を溜め込みやすくなりました。
昔は今ほど食料事情は良くありませんでしたから、特に女性は妊娠を継続しやすくするために “お腹からお尻” 周辺に脂肪を溜められるように進化しました。
ところが、温度が下がると体表面の毛細血管は収縮して熱を逃がさないようにします。
お腹やお尻などは脂肪が多く付いているので、体の熱が外に出にくくなっているので、この周辺は冷たく感じるのです。
こうした背景から分かるように、手足の冷えやお腹やお尻周辺の冷えは、子宮や卵巣の冷えを意味するものではなく、よほどその症状が苦痛に感じない限り妊娠に対してマイナスになる事はありません。
冷えを解消する方法とは?
冷えは妊娠にとってマイナスにならないという事が分かっても、冷えを感じるとどうしても気になってしまうもの。
そこで、この血液の持つ「熱を運ぶ」作用をうまく利用して冷えを解消する方法をご紹介します。
人のからだは首で寒さを感じると手足を中心とした毛細血管が収縮するようになっています。
寒い時は首を外気にさらさないようにするだけで血管は収縮せずに熱を手足に運び続けてくれるので冷えを感じにくくしてくれます。
また、意外と多いのが布団の中に入ると手足が冷たくなるという人。
これは布団そのものが20度くらいしかないので体の熱を奪われてしまうからです。
こういった方はフリース素材など起毛している生地で足首を締め付けない靴下を履いて寝ると冷えを感じにくくしてくれます。
そして、簡単な運動で熱を手足に送る方法も知ってください。
- 両手を肩の高さで前に伸ばします。
- ゆっくりと手を大きく「パー」にします。
- パーにしたら今度は親指がこぶしの外になるようにゆっくりと「グー」にします。
これを10回繰り返してください。
グーにすると手のひらの冷えた血液を心臓に向かって押し出し、パーにすると反対に温かい血液を引き込んでくれます。
足先は仰向けで同じように足の指でグーとパーを作ってみましょう。
いかがでしたか?今回は、一般的に考えられている「冷えと妊娠の関係」について、生物の話を元にお伝えしました。
また、ちょっとしたコツを取り入れるだけで冷えを感じにくくしてくれる方法も紹介しましたので、是非妊活に取り入れてみてくださいね。