管理栄養士の岡田明子さんに、妊活中の食事について伺いました。
「妊活中の食事って、どうしたら良いのだろう?」
妊活中に栄養をしっかり摂ったら良いのはわかるけど、献立を考えるのも大変です。
また、不妊治療を受けている場合や、働きながら妊活をしている場合、中々自分で料理をする時間が取れず、外食に頼りがちになることもあるのではないでしょうか。
そこで、今回は、管理栄養士の岡田明子さんに、妊活中の食事のポイントについて伺ってきました。
岡田さんは、食事による妊活サポートを幅広くされている方で、デレビ・雑誌などのメディアにも多数出演されています。
とてもわかりやすく、教えて頂きましたので、是非読んで参考にしてください。
※以下、Q.は私の発言、A.は岡田さんの発言です。
管理栄養士として妊活をサポートするようになったストーリー
まずは、岡田さんが管理栄養士として妊活のサポートをするようになった経緯について伺いました。
お母様が作った食事が、管理栄養士の原点に
Q. 岡田さんが管理栄養士になったきっかけのようなものはあったのですか?
A. 実は、小さい頃にアトピーやニキビで悩んだ時期があったんです。それにちょっと太っていたんですよ。それで、母が、体に良いものを・・・ということで、ずっとなるべく添加物のない食事を作ってくれました。そのお陰で、アトピーもニキビも治り、ダイエットもできたという経験があるんです。
Q. それが、管理栄養士を目指すきっかけの一つになったのですか?
A. はい。自分自身の体験で、食が体に影響を与えることを、身にしみて感じました。
Q. 添加物が少ない食事を食べ続けられたというのは、とても幸せですね。
A. そうですね。小さい頃から添加物の少ない食事をしてきたので、何か食べれば、人工甘味料や添加物が入っているかどうかは、大概わかります。
ヨガの食事サポートが妊活サポートのきっかけに
Q. では、管理栄養士になった後、妊活のサポートをするようになったのは、どんな経緯があったのですか?
A. 元々、自分自身が13kgのダイエットに成功したこともあって、ヨガ教室でダイエットサポートの仕事をしていました。ちょうど同じ時期に、不妊サプリの食事サポートをする機会があったのですが、その時にヨガ教室の生徒さんから「不妊サポートもやっているんですか?」と聞かれたんです。実は、不妊改善のためにヨガ教室に通っている人が、結構いらっしゃったんですね。
Q. 確かに、amazonなどを調べていると、妊活向けのヨガの本を見かけることがあります。
A. ヨガも妊活も、必要な食事のベースは同じなんです。結局は、栄養バランスが大切。そこで、不妊で悩んでいる女性の助けになれば・・・と思い、妊活のセミナーをやり始めたのです。
岡田さん自身も、妊活を経験されていた
Q. なるほど。そんなきっかけがあったんですね。岡田さんご自身も、確か一児のママでいらっしゃいますよね。
A. はい。実は、私も妊活経験者なんです。
Q. えっ?そうなんですか?
A. はい。ずっと仕事してきたのですが、35歳超えた時に、さすがに焦り始めたんです。妊活をして初めて「卵子の老化」の話なども聞きました。それで、時間がないと思い、すぐに病院に行ったんです。
Q. そうだったんですね。でも、元気な赤ちゃんに恵まれてよかったですよね。
A. はい。幸い、半年で妊娠できました。これも食事に気をつけていたおかげかなと思っています。
サポートで触れてきた妊活の悩み
Q. 今までサポートしてきた女性は、どんな年齢層の人が中心でしたか?
A. 30代、特に30代後半の人が多かったです。私と同様、とても焦っている人が多い印象です。
Q. どんな悩みを持っている人が多かったですか?
A. まず、働きながら妊活している人は、とにかく忙しいということ。食事などで体に気を遣う時間が持てないんです。また、不妊治療で病院に通っている人は、大きなストレスを抱えていました。不妊治療の病院の多くは、人数が多くて待ち時間が長い上に、独特の雰囲気があって・・・それだけでもストレスが溜まりやすいんです。
Q. 不妊治療を始めると、食事に気を遣っている時間も中々とれなくなりませんか?
A. はい。その通りなんです。食事に気を遣いたいのに、その余裕がなくなることが多いです。だから、結婚当初にブライダルチェックを受けて、若い頃から食にも気をつけることが大切です。不妊治療も含め、妊活をいろいろやった人は、結局最後は「食」に行き着く印象を持っています。不妊治療で疲れてしまった人が、食事を改善して妊娠・・・ということも、けっして珍しくないんですよ。
Q. 妊娠報告を受けることもあるのですか?
A. はい。あります。「セミナーを受けて食事に気をつけてから妊娠できました!」というご連絡を頂くのは、本当に嬉しいです。
妊活中の食事の取り方でのポイントは、バランス食
栄養バランスの取れた食事が、妊活のベースになる
Q. では、妊活中の食事で大切なことを一つあげるとすると何でしょうか?
A. 「バランス食」です。栄養バランスの取れた食事をすることが何よりも大切です。
Q. 栄養バランスが良くないと・・・ということですね。でも、なぜ、妊活中に栄養バランスが大切になるのですか?
A. 鉄分やカルシウム、ビタミンなど、妊活中に必要な栄養素はたくさんあります。でも、こういったものを摂るだけでは、効果が発揮できないのです。
例えば、貧血の人が病院に行って鉄剤を処方してもらったとします。ところが、この人が栄養バランスが取れた食事をしていないと、鉄の吸収が十分にできません。どんなに良い栄養素を取り入れても、働いてくれないのです。
Q. なるほど。栄養素をしっかりと摂るためのベースを作るのが、バランス食というわけですね。
バランス食の取り方
Q. では、栄養バランスの良い食事を摂るためのポイントを教えてください。
A. 基本的には、和定食をイメージすれば大丈夫です。和定食は、主食のごはん、主菜としてお魚・お肉、副菜、味噌汁といった構成になっていますよね。毎日の食事が、このイメージで作られていることが、大切です。
Q. 意外です。何か、もっとスペシャルなおかずが必要だと思っていたので・・・。
A. いいえ。何か一つのものに頼るのは意味がないんです。万能な食事というのはありません。一つの栄養素に偏ることなく、バランスのとれた食事こそ、妊活に最も大切なんですよ。
Q. でも、自分が、バランスの良い食事を摂れているか?って、ちょっとわからないですね。
A. はい。妊活で食事のサポートをしていても、自分が毎日何を食べているか把握していない人が結構多いんです。一度、自分自身が何を食べているか、紙に書き出してみると良いかもしれませんね。
Q. そうですね。でも、毎日、どの栄養素を何g摂ったか?なんて、考えていたら、大変です。
A. はい。だから、和定食のイメージが大切なんです。食事を作るときに、和定食と同じになるように作る・・・これだけでも、栄養バランスはそこそこ保てます。難しいことをやっても継続できません。継続できなければ、妊活は成功できないと思います。
Q. 私も、スペシャルな方法を聞くと、頑張ってやってみようと思ってしまいます。でも、結局続かないことって多いんですよね。
A. はい。妊活の食事の方法は一つではありません。基本の型だけ覚えて、あとは、自分のライフスタイルに合わせて、できるところから変えていくことが何よりも大切です。
妊活中の食事は、忙しくても工夫次第
外食やお惣菜の活用もありです
Q. ところで、忙しくて時間がないと、すべて自分で作るというのは、中々大変です。外食やお惣菜を買ってくるといったことでは、ダメでしょうか。
A. いえ、妊活の食事でも、外食やお惣菜の活用は「アリ」ですよ。いくつかのことに気をつければ、すべて自分で作る必要はありません。コンビニで売っている健康に配慮したお弁当なども活用できます。
Q. そうなんですね。ちょっとホッとしました。
A. ただ、さすがに毎日外食・・・というのはお勧めしません。
Q. 確かに、妊活に限らず「外食は体に良くない」と聞きますが、なぜなんですか?
A. 外食は、味が万人受けするように塩分が濃くなっているんです。また、体に良くない安い油を使っているところもあります。添加物が含まれていることも多いです。もちろん、体に良いものを出しているお店もありますが、こういったことを一品ごとに調べて食事をすることはできませんからね。だから、毎日の外食は避けたほうが無難です。
妊活中の外食で気をつけること
Q. では、妊活中に外食をする時に、気をつけた方が良いことはありますか?
A. 家での食事が和定食をイメージした方が良いのと同じで、できるだけ定食屋さんが良いと思います。特に女性の外食は、タンパク質が不足することが多いです。パスタランチとか、コンビニでサンドイッチ・・・といった様に、炭水化物中心になることが増えてしまうんですよね。
Q. 確かにそうですね。定食屋さんに入ったとしても、気をつけた方が良いおかずはありますか?
A. まず、油の関係で、揚げ物は控えた方が良いです。また、体に悪い脂肪分を避けるため、肉なら赤身にしてロースよりヒレを選ぶ、鶏なら胸肉・ささ身を食べるといったことは大切です。
Q. タンパク質はお肉ではなくて、大豆製品からの方が良いのでしょうか?お肉は太るイメージがあって・・・。
A. いえ、お肉も必要です。タンパク質を構成している物質を「アミノ酸」と言います。このアミン酸は、食材によって種類が全く異なってくるのです。お肉でしか摂れないアミノ酸もあれば、大豆製品でしか摂れないアミノ酸もあります。どちらのアミノ酸も大切なので、タンパク質は色々な食材から摂るのが良いですね。
売っているお惣菜の選び方は、「色」に気をつけて
Q. 会社の帰りにスーパーによると、ついついお惣菜コーナーで済ませてしまおうかなって思うことがあります。妊活中の食事としても問題無い選び方はありますか?
A. これも、基本的に和定食のイメージですから、主菜と副菜をしっかりと選ぶことは大切ですね。コツは「色に気をつける」ことです。
Q. 色と栄養バランスと関係があるのですか?
A. はい。例えば、買ったお惣菜で茶色が多いとお肉類が多いですし、緑が多ければ野菜が多いです。買ったお惣菜を食卓に並べた時に、「色彩が豊かになっていれば、栄養バランスが整っている」と考えて選ぶのが良いと思います。
Q. なるほど。「いろんな色がある食卓」をイメージすれば良いわけですね。
忙しくても、妊活に良い食事を作るなら「鍋」「旬のもの」
Q. 外食、お惣菜を上手に活用できたとしても、やはり家で食事を作らないとなりませんよね。手間をかけずに、効率的に栄養バランスを取れる方法はありませんか?
A. そうですね。鍋はおすすめですよ。調理時間がかからないし、色々な具材を入れることもできます。週末には鍋・・・なんて良いですよ。色々な具材を入れられるという意味では、具だくさんのスープもお勧めです。
Q. なるほど。確かに、調理時間が短くて助かります。
A. 他には、常に「旬のもの」を食べることも大切です。野菜などは、旬のものを食べるだけで、その他の季節の2倍のビタミンが摂れる・・・なんてことは、普通にあります。
Q. まさに、効率的に栄養を摂れますね。
A. 働いている人なら、休みの日に常備菜を作っておく、ごはんを冷凍しておくといった工夫をするだけでも、平日の仕事の後が少し楽になりますよ。
妊活中の食事と体重管理
Q. 最後に、体重管理について教えて下さい。妊活中は、ダイエットも必要なのでしょうか。
A. そうですね。確かに太っているのは良くないです。ただ、実際にサポートの現場にいると、むしろ痩せすぎている人の方が多いのです。妊活は、痩せすぎていても良くありません。
Q. これは意外です。妊活中の食事は、脂肪分を摂らないようにしてダイエット・・・みたいなイメージを持っていました。
A. 脂肪も必要なんですよ。ただ、実際、摂ってはいけない脂肪もあります。ただ、これらのことを毎回考えて食事をしていると面倒になってしまうので、オメガ3脂肪酸を積極的に摂ることを考えるのが、わかりやすいと思います。
Q. オメガ3脂肪酸は、妊活にはなぜ必要なのですか?
A. ホルモンバランスを改善してくれます。妊活を成功させるためには、とても大切なことですね。
Q. オメガ3脂肪酸は、具体的に、どんな食材で摂ることができるのでしょうか?
A. 青魚や亜麻仁油がお勧めです。亜麻仁油のドレッシングを作っておいてサラダにかけるのも良いですね。そうすれば必要な脂をしっかりと摂ることができます。
取材を終えて
取材をして思ったのは、岡田さんは、とても実践的なお話をされる方だなということです。
杓子定規に理論をお話されるのではなく、私達の実情に合わせて、継続できることを提案して頂けました。
また、お話もとてもわかりやすく、難しいはずの栄養素の話が、スッと頭に入ってきました。
これも、岡田さん自身が、働きながらの妊活・出産を経験されているからだと思います。
岡田さん、取材へのご協力、ありがとうございました。
岡田明子さんプロフィール
自身の35歳からの妊活、妊娠を通じて「妊娠を望む方の食事サポート」も行い、個々の生活習慣に合わせた的確な指導に定評がある。食事サポート実績は延べ1万人に及ぶ。
2014年一般社団法人NS Labo(栄養サポート研究所)を設立し、 栄養士、管理栄養士をサービスパートナーとして、健康事業のサポートとヘルスケア分野で活躍できる人材育成を行っている。